山形大学医学部

内科学第三講座(第三内科)

神経内科・糖尿病内科・代謝内分泌内科・血液内科(第三内科)

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正常圧水頭症の研究

特発性正常圧水頭症の疫学研究

 当講座の高橋 賛美 医師らは、2000年~2004年、山形県の2つの地域の61歳と70~72歳の全住民1142人を対象に脳MRIを含めた住民健診をおこないました。この疫学調査の特徴は、症候の有無に関係なく地域住民の対象者すべてに脳MRI検査を行い、画像上特発性正常圧水頭症が疑われる住民を抽出するという方法で行われたことです。その結果、790人(全住民の69.2%)が健診に参加し、そのうち、脳室拡大(Evans index >0.3)は51人(健診受診者の6.5%)に認められました。脳室拡大を有する人の中で、特発性正常圧水頭症に特徴的な脳MRI所見を呈する人は12人(健診受診者の1.5%)であり、そのうちの4人(健診受診者の0.5%)には知的機能低下あるいは歩行障害が認められました。したがって、この疫学調査の結果からは、MRI-supported possible iNPHの有病率は高齢者の0.5%であることが判明しました。

(参考文献:加藤、伊関、高橋、他:臨床神経50(11):963-965.2010.

AVIM(エイビム)の発見

 糖尿病においては、耐糖能障害(境界型)という状態を経て糖尿病が発症することが分っています。認知症においても、MCI(mild cognitive impairment)という状態を経て認知症が発症することが明らかにされています。私たちは、特発性性常圧水頭症はAVIMという状態を経て発症することを提唱しています。以下にAVIM発見の経緯について説明します。
 上記の疫学研究により、地域住民には無症候性脳室拡大が高齢者の中に相当数存在していることが確認されました。また、脳室拡大に加えて、高位円蓋部の脳溝・くも膜下腔の狭小化、つまりDESHの所見を呈する人が12人おりました。このうち8人には、明らかな神経症状をみとめませんでした。この特発性正常圧水頭症に特徴的な脳MRI所見を呈し、無症候である一群を、我々はAVIMasymptomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI)と命名しました。AVIMを4~8年間追跡調査した結果、8人中2人に認知障害と歩行障害、つまり特発性正常圧水頭症が疑われる症候を呈するようになりました。また、10年後にはさらに1人が排尿障害、知的機能低下と歩行障害を発症し、シャント術が奏効したためdefinite iNPHと診断しました。これらの前向き観察結果により、脳MRI所見の異常が神経症状出現に先行すること、AVIMは preclinical iNPHである可能性が示唆されました。この成果は「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第二版(2012)」にも記載されています。現在、「AVIMからiNPHに移行する要因」を明らかにするため、厚生労働省研究班で全国調査を行なっています。

(参考文献:Iseki C et al. J Neurol Sci 277 (1-2) :54-57. 2009

遺伝性正常圧水頭症の発見

 遺伝学的視点から考えると、同一家族内で複数の正常圧水頭症患者の発生もあることから、遺伝的素因(遺伝的危険因子)が存在する可能性も考えられます。当講座のTakahashiらは3世代にわたり8人の正常圧水頭症が発症している大家系を報告しました。常染色体優性遺伝形式で発症しており、個々の患者は孤発性の特発性正常圧水頭症とまったく同じ臨床像・脳画像所見を呈していました。このことは、単一の遺伝子異常(あるいはゲノムの単一領域の異常)により、特発性正常圧水頭症とまったく区別のつかない臨床像・脳画像所見が惹起されることを示唆しており、この家系の病因遺伝子異常を解明することは、特発性正常圧水頭症の病態を分子レベルで解明するための突破口になると考えられます。

(参考文献:Takahashi Y et al. J Neurol Sci 308 (1-2) : 149-151. 2011

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お知らせ 2017,4,20

「パーキンソン病患者様からご提供された遺伝子の解析結果の公表について」